音楽は不滅、では我々は? – THPO 第18回演奏会(延期公演)

明けて2022年、最初の演奏会は私が所属・運営に携わっている、東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団(THPO)の演奏会でした。

東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団 第18回演奏会《音楽と共に未来へ》

東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団 第18回演奏会(延期公演)フライヤー
東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団 第18回演奏会(延期公演)フライヤー
日時
2022年1月16日(日) 開場13:00 開演14:00
会場
めぐろパーシモンホール 大ホール
曲目
ジュゼッペ・ヴェルディ / 歌劇『運命の力』 序曲

Giuseppe Fortunino Francesco Verdi / Opera “La Forza del Destino” Overture
フランツ・リスト / 交響詩『前奏曲』 S.97

Franz Liszt / Sinfonische Dichtung “Les Préludes”, S.97
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン / 交響曲第5番 ハ短調 作品67 (運命)

Ludwig van Beethoven / Sinfonie Nr. 5 c-Moll, Opus 67, (Schicksals-Sinfonie (Fate Symphony))
(アンコール) フェリックス・メンデルスゾーン / 劇付随音楽『夏の夜の夢』 作品61より 「結婚行進曲」

Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy / Bühnenmusik „Ein Sommernachtstraum“ Op. 61 – Hochzeitsmarsch
第18回演奏会の曲目は事情により曲目を変更します
指揮
小久保陽平
入場券
入場無料・全席指定席

演奏の出来としては悪くない――いやむしろ、これまでのTHPOの中でもかなり良い仕上がりになったのではないか、と思っています。どれも有名な曲で、団員の多くが演奏経験が多かったからかもしれません。アンコールの結婚行進曲は、アンコール曲の決定が本番2ヶ月前に決定、合奏で2〜3度通したぐらいという練習回数の少なさでしたが、ちゃんと聞ける演奏になってよかったです。トランペットがアシ含めて3人体制になってホント良かった。

リスト「前奏曲」はこれまでなかなか1st正乗りでの出演が叶わず(以前吹奏楽(アヴァンプルミエ)で出演したときは2ndで、ミモザ第3回演奏会で演奏したときは代奏は散々しましたが本番は降り番)、ようやく出演することが叶いました。木管同士のアンサンブルも含め、わりと上手く行っていたのではないかと自負しています。


本番は概ね成功した演奏会でしたが、ここまでの道のりは平坦なものではありませんでした。

他の数多ある楽団と同様、THPOも当初決まっていた演奏会を中止・延期し、曲目も変更する決断をせねばなりませんでした。

当初のメイン曲であるマーラー交響曲第1番は、4管編成という巨大な編成です。練習会場の人数制限が続いていたため(江東区は本来の定員の半分程度とする会場が多かったです)、そもそもメンバーを集められたとして練習ができない恐れがありました。

また巨大な編成を演奏するだけのメンバー集めも苦戦することが想定されました。案外と「管楽器奏者は伝手を使えばどうにか集められるかもしれない」という予想がありましたが、そのような大編成に退治できるだけの多くの弦楽器奏者を集めることのほうが至難なのではないか、ということも懸念点でした。

そういった事情を考慮した結果、基本的に2管編成で収まる曲を中心とした「運命の力」「前奏曲」「運命」というプログラムに決定しました。いずれも運命を感じさせる、統一感のあるプログラムになりました。

運命の「暗→明」という展開と、足尾銅山の「荒廃からの復興」という姿勢につながるものを感じて、緊急事態宣言下に(県内移動なので問題なかろう、という理屈をつけて)訪問した足尾銅山の写真をデザインに用いることとしました。

いつものTHPOの業務であれば、デザインが決まれば仕事はほぼ終わったようなものなのですが、今回はそういうわけにもいかず。感染症対策を万全にするため、消毒液の準備、CO2濃度センサーを用意し、合奏ごとに参加者に使ってもらうように準備しました。消毒液はどういうタイプが最も適したものかわからず、アルコールスプレー2種類のほか、布・プラスチック用に非アルコール消毒液のイータック 抗菌化スプレーα手を触れずにアルコール噴射するキングジムのtetteなど、あらゆる衛生器具を用意しました。

入場システムも従来から見直すこととしました。来場者の緊急連絡先を把握するよう会場から養成されていたこともあり、座席指定・入場管理・連絡先管理を一度に行えるteket (テケト)導入しました

以前ヒネモスでも導入した経験があったものの、THPOは来場者の年齢層が高めなので、トラブルになるのではないか、という懸念もありました。実際、本番の日が近づくにつれて問い合わせは増えていたようですが、概ねウェブからの予約に誘導することができ、また本番当日の受付周りも特に混乱なく行えたようでした。

・・・とここまでの用意はしてきたものの、肝心の企画の内容までは細かく手が回らず。「演奏に入る前に軽く曲紹介をする」という打ち合わせはしたものの、どのような内容を指揮者に話してもらうか、までは考えを詰められず、台本の殆どを丸投げすることになってしまいました。小久保陽平先生がヴェルディやリストに扮して話してもらう、という展開、そのトーク内容も含めてお任せしていました。いつものTHPOらしい楽しい演奏会になったのは、前回演奏会でも共同進行として携わってくれた陽平先生が、THPOに深い理解を示してその意図を汲み取ってくれたからであり、感謝してもしきれません。

いろんな困難はありつつ、演奏会は無事に終えることができました。

ただ、これが今後も続けられるか、次回以降のTHPOも演奏会を届けられるか、というと、それは未確定です。「奏者を集めるのが大変」だと先述しましたが、実は運営陣も実質少ない人数で業務をこなしていました。「事務局メンバーの大半が結婚・出産などのライフスタイルが変化した」(事務局の私以外の全員がついに既婚者となりました)、「補充するべき事務局メンバーをおざなりにしたまま演奏会シーズンがスタートしてしまった」というのが理由です。さすがに打ち上げの段取りまで自分がやりかけた(本番直前に感染者数が急増したため楽団全体での打ち上げは結局中止に)のはやりすぎたと思っています。

本番後のウェブ飲み会で「ようやく正気に戻った」と私が口走ったことがありました。少ないメンバーで業務をこなさねばならない多忙さ、感染リスクを抑えるために気をつけないければならない衛生面での不安さ、子供が入場するということ(THPOとしては通常営業なのですが)に対するトラブルの懸念など、本番当日まで、いや本番でのクラスター発生が発生しなかったということが発覚する公演2週間後まで、気が気でない状態であったので(実際、同じ日に公演を行ったアマチュア楽団でクラスターが発生したということもありました…)、それはまさしく私にとって「気が狂うほど」の心境でした。

そんな気苦労をしてまで、また演奏会をするか――いや、したいんだなあ。複数の楽団に所属している私ですが、奏者同士でのアンサンブルが最もやりやすいのはこのオケ、東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団ですし、大変な苦労があるだけそれを乗り越えて成功した時の感慨は一入です。様々な問題点を一つ一つ解決しながら、次の活動へとつなげていきたい・・・そう考えています。

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