先週号(2008.4.10 No.187)のR25で、高橋秀実さんの隔週エッセイ「結論はまた来週」、最近自分が持っていた疑問というか違和感に答えてくれるような内容でした。
第一〇六回
人生は楽しむためにあるのだろうか?そろそろ寝ようかと思いつつテレビを眺めていたら、あるタレントがこんなことを言っていた。
「人生は楽しむためにあるんです」
私は目が覚めた。そういう言い方が人心を惑わすのだと憤り、思わず起き上がってしまったのである。
近頃、誰も彼も「楽しむ」と言いすぎではないだろうか。勝負に生きるスポーツ選手たちも試合前に「楽しみたい」と口にする。俳優にしても番宣で「スタッフとも和気あいあいで、楽しい現場でした」と語ることがお約束かのようである。しかし人を楽しませる前に自分が楽しんでどうするのだ。
楽しい利己主義というべきか。ビジネス書の類も「仕事で自己実現」などと実に楽しそうなノリだが、そのノリで他人様から金銭を頂戴できるのだろうか。そんな心構えで事に臨んでは、「あっ楽しくない」と思った瞬間に落胆し、「私に向いてない」と早々にやめてしまうのがオチだろう。