車両入構有料化を考察したら、キャンパス計画が見えてきた

先週にも書きましたが、今年度より、東京工業大学のキャンパス構内へ入構するのが有料化されました。

一部では「良い収入源だ」と言われています。確かに国立大学法人化で、自前で収入源を得るという目的もあるとは思いますが、どうもそれだけが理由ではなく、学内から無駄な自動車を排除し、歩車分離を進めるキャンパス計画の一部のようです。

桜並木の整備

以前は本館正面から続く桜並木の両脇に車道が正門まで続いており、正門から本館や西地区まで行くには車道を通っていかねばならず、歩道が整備されていたものの、自動車と歩行者は完全に分離はされていませんでした。

そこで2005年から2006年にかけて桜並木周辺を改修し、ウッドデッキの整備と車道を一部撤去し、歩行者と自動車の動線を分離し、また桜並木周辺を東工大の新しい名所として位置づけました。

マスタープランの制定

2006年12月には、「マスタープラン」と題された大岡山とすずかけ台のキャンパス将来計画が発表されました。

その中では、現在の大岡山キャンパスの問題点として、慢性的な路上駐車・駐輪歩行者、自転車、自動車の道路共有正門付近の動線交錯などが指摘されていました。

そこでキャンパスを整備する上で、6つの空間コンセプトを挙げました:

  1. 駅前空間と密接に関連した多層的機能空間
  2. 緑地軸と広場空間のネットワーク化
  3. 歩行者専用ゾーンと駐車場配置
  4. 歴史と伝統に培われたテクノロジーと文化が薫る空間
  5. 地域と大学との関係の親密化
  6. 持続可能なインフラネットワーク

そのうち歩行者専用ゾーンと駐車場配置では、構内道路は、歩道を主体とし、形状と空間の広がりを感じさせる素材による舗装に切り替える。こととキャンパス外の公道から直接利用できる駐車場を必要台数分整備する。ことが明記され、平成24年から29年のII期計画の中で歩車分離及び立体駐車場・駐車場等整備を行うことを計画しています。

大岡山キャンパスの包括的交通対策の策定

マスタープランに続いて、2007年3月には総合安全管理センターが「大岡山キャンパスの包括的交通対策の基本方針と実施計画」を策定、3つの原則(路上駐車禁止、歩行者の優先、年間許可証の入構優先)を定め、以下の5つの実施内容を定めました:

  1. 年間入構証の発行方式の改定
  2. 臨時入構の許可・発行方式の改定
  3. 入構車両への課金 (臨時入構,年間入構証利用者への課金)
  4. 駐車場および停車スペースの整備と利用
  5. 「路上駐停車厳禁区間」の指定

ここで、臨時入構の許可・発行方式の改定で、平成20年度からIDカードを読み取り、構内にどれだけの車両が入構しているかを随時集計できるシステムを導入することとしており、入構車両への課金はそのシステムのリース代として充てられることが書かれています。

  • 入退構ゲートのリース料は,自動車入構を原因者とする経費であることから,その費用を車両入構に際して課金することで,直接利用者から回収する方式が考えられる.
  • 上記に示した新たなゲートには,機能強化のため追加的な費用が必要になると予想される.そこで,平成20年度より入構車両に対する課金を導入する.
  • 入構料金はゲートの使用料であることから,年間入構証利用者も含めた全車両から徴収することが原則になる.学外者にも一律の料金とすることが運用上適当と考えられる.
  • 入構ゲートは,日々の入構管理を行うことにより,現状を把握しキャンパス内の駐車環境等の自動車交通対策に資することを目的とし設置される.したがって,入構料金は,入構ごとの料金ではなく,駐車日数に応じた課金を行い,支払を条件に退構を認めるものとする.
  • 入構料金の総額がゲートリース料を上回る場合には,それを駐車場の整備費用やキャンパス内巡回費用など,包括的交通対策の範囲内での活用を原則とする.
  • なお,物品搬出入や郵便,宅急便などの短時間入構(たとえば60分未満の退構)は無料とすることが適当であろう.

学内の包括的交通対策の基本方針と実施計画 -大岡山キャンパス-

ちなみにこの資料によると、大岡山キャンパスに入構する車両は一日あたりおよそ150台、これらの車両に全て課金するとすると、年間でおよそ540万円が東工大の収入となるようですが、ゲートリース料を支払うことを考えると、東工大に残るお金は微々たる金額の予感。

また、現在のキャンパス内に整備されている駐車スペースは139台しか用意されておらず、学内者の入構上限を週に3回にすることと停車スペースを確保することでこの格差を埋めることとしているようです。

資料には書かれていませんが、入構を有料にすることで不必要な入構車両が減り、学内を走行する自動車が減ることで、結果的に歩車分離が進むかもしれません。おりしも大岡山駅前のロータリーが整備されましたし。サークルの合宿等に向かう車両はこれから駅前ロータリーで学生をのせるのが主体になる、かも。

そんなわけで、入構有料化は、単に大学の収益を上げるのが目的ではなく、キャンパス計画の一環としてやむを得ない措置、ということみたいです。でも「リース代に充てるための課金」って、道路特定財源の暫定税率みたいな響きだなあ。

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