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「ハーモニー」観てきました

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今日の仕事終わりに、吉祥寺プラザにて映画「ハーモニー」を観てきました。観よう観ようと思っていながら機会を失っていて、公開終了間際にようやく劇場で見ることが出来ました。2015年11月13日封切りですから、一体2ヶ月何してたんだよって感じですが。

夭折した作家・伊藤計劃が原作の3作品「虐殺器官」「ハーモニー」「屍者の帝国」をアニメ映画化するProject Itohの封切り第2作目。ちなみに第1作目「屍者の帝国」は既に観ていて、こちらの感想も書こう書こうと思っているのですがちょっと後回しに。

今日ようやく鑑賞した「ハーモニー」、自分が今持っている感想は纏まっていないし、公開から既に2ヶ月以上経っていて新鮮味にかけるし(そもそも原作小説はそれより前に刊行されているのだし…)、つらつら綴るならTwitterでも事足りるような内容ですが、念の為ネタバレを回避するため、そして見終わった直後の新鮮な感動を書き記すために、ブログの記事にしておきます。

そんなわけで以下ネタバレ注意です。

物語の結末を一言で説明すると――世界を混沌に陥れた首謀者は処刑され、世界に再び平和が訪れた――

これだけ説明すると、めでたしめでたしのハッピーエンドである。

しかしこの物語は、私から見て、どう考えてもバッドエンドである。素晴らしき、バッドエンドである。

「大災禍」と呼ばれる世界規模の混沌から復興した世界。「大災禍」の反動で、世界は極端な健康志向と社会の調和を重んじた、超高度医療社会へと移行していた。そんな優しさと慈愛に満ちたまがい物の世界に、立ち向かう術を日々考えている少女がいた。少女の名前は御冷ミァハ。世界への抵抗を示すため、彼女は自らのカリスマ性に惹かれた二人の少女とともに、ある日自殺を果たす。13年後、霧慧トァンは優しすぎる日本社会を嫌い、戦場の平和維持活動の最前線にいた。霧慧トァンは、かつての自殺事件で生き残った少女。平和に慣れ過ぎた世界に対して、ある犯行グループが数千人規模の命を奪う事件を起こす。

TOHOシネマズのサイトからあらすじを引用した。これだけ読んでも全く読んだことのない人にはピンと来ないかもしれない。しかしだからといって自分があらすじを書いても稚拙な文章にしかならなさそうである。単なるネタバレ文章になりそうだ。でも頑張って書いてみようと思う。

御冷ミァハは、世界を混沌に陥れることを画策する大犯罪者、ではない。人間が元々有している個々の意識を、主体性を、個性を、全人類から無くそうとしているのだ。

彼女の出身であるチェチェンの山奥の少数部族は元々、意識を持っていなかった。植物人間、というわけではなく、お互いが優しさと思いやりで社会を円滑にするため、周りと張り合ったり闘おうという個々人としての意識が不要となっているのである。しかし彼女が兵士に誘拐され、薄汚い建物のベッドの上で犯されつ中で、意識を獲得した。それは苦痛であり悲痛である。意識を持つことは彼女にとって苦しみであった。

やがて彼女は戦争孤児として日本に移り住み生活を送るが、意識を持つことが彼女の足枷であることには変わりなかった。痛み、苦しみ、憎しみ、争い、そういった感情を、自分から、そして世界から消し去ろうとしているのだ。争いのない、人同士が思いやる世界に成るためには、個々の意識を消し去ることが必要だ。そうすれば自分がかつて持った苦しみも消え去るのだ――。

「ハーモニープロジェクト」は、人類から意識を消し去るプログラムである。意識を消し去れば各個人の争おうとする競争心がなくなり世界に平和が訪れる一方、個々人の人間としての性質は永遠に失われてしまう。勿論世界のお偉いさん方はそんな意識のない世界は嫌だが、一方で争いばかりの世界も嫌だ。そんな人達がハーモニープロジェクトを躊躇する中、ミァハの策略により、自殺、殺人、無理心中、世界の各地で混乱が訪れる。

霧慧トァンは、社会を健康に保とうとするあまり個々人を監視する社会システムを嫌っていた。同級生であるミァハの社会に反抗する姿勢に憧れ、そして彼女を愛していた。しかし、彼女のせいで(直接手を下したわけではないが)トァンの父親が死んでしまう。トァンの意識による苦しみを理解しつつ、しかし彼女が引き起こした世界の混沌に、彼女が下した決断は――。

…ここまでがあらすじである。え、さっぱり分からないって?うん、それじゃあ原作か映画を見てもらったほうが良い。

彼女が下した決断は――、霧慧トァンは、御冷ミァハを「意識があるうちに」葬った。世界から混沌がなくならないため、ハーモニープロジェクトが発動、人間の個人の尊厳と引き換えに、世界に平和がもたらされたのである。

個人の意識が無くなった世界はどのようなものか、作中で多くは語られていない。自分はこれを「バッドエンド」と考えたけれど、実は案外、良い世界なのかもしれない。だって平和だ、宗教や国同士の争いもないんだろうし、きっとみんな優しい人ばかりの社会になっているはずだ。個人の意識はないけれど。

この映画を見て「ああすごい映画だ!」という感動を共有したくてこの記事を必死に書いたけれど、残念ながらこの映画の見所を1%も伝えられている自信がない。ミァハとトァンの愛しあうシーンとか(裸とかではないがキスシーンはある、そして妖艶だ)、未来的な日本の風景とか、いろいろ良い所はたくさんある。作品の好き嫌いはあるとは思うのだけれど、伊藤計劃の創りだした作品の世界を(おそらく)魅力いっぱいに作られた映画であると思います。この映画を世に送り出してくれた、フジテレビ「ノイタミナ」、東宝、ほかProject Itohの面々に感謝である。吉祥寺プラザでは1月29日まで上映されているようですので、機会ある人は是非ともご覧ください。

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