「東工大ビジョン2009」斜め読み

東京工業大学の将来構想「東工大ビジョン2009」が発表されています。

東京工業大学の将来構想「東工大ビジョン2009」

—「時代を創る()(わざ)(こころざし)()の理工人」の育成を目指して—
Tokyo Institute of Technology Vision 2009.

東京工業大学は、これまでにも様々な機会を捉え、大きな飛躍を期して将来構想を策定して参りました。このたび、第2期中期目標・中期計画の策定や2011年の創立130周年という大きな節目を迎えるに当たり、国立大学法人の新しい体制となって初めての将来構想を、企画室将来構想検討班及び将来構想検討のための学長直属の特命検討チームの議論を経て、「東工大ビジョン2009」という形でとりまとめました。

この将来構想には、学長としての私の想いも詰まっています。そのため、「知・技・志・和の理工人」という新しく創った言葉も敢えて使っています。これは、知を極め、技を磨き、高い志と和の心を持つ理工人を意味します。この言葉は、本学が高い理想を掲げ、それを実現することにより、この言葉が社会的に認知され、やがては「東工大発の概念」として定着していくことを目指して今回提起したものです。かつて「煙突のあるところ蔵前人あり」と謳われたように、「知・技・志・和の理工人」は、新しい時代にもその時代に即した形で本学が社会から高い評価をいただけるように期待を込めているモットーでもあります。

こうした期待が現実のものとなるためには、「東工大ビジョン2009」に掲げた構想を全学が一丸となって実現し、学生や産業界のみならず、広く社会からの期待に応えていくことが必要です。私は学長として微力を尽くし、将来構想の実現に邁進する所存ですので、皆様の温かいご支援とご協力をお願いいたします。

平成21年4月
東京工業大学
学長 伊賀 健一

「東工大ビジョン2009」においては、今後10年を貫く基本方針を次のように定めた。

東京工業大学(東工大)は、その使命に基づき「時代を創る()(わざ)(こころざし)()の理工人」を育成することを基本方針とする。 世界的な視野に立って大学力を高め、社会に貢献しうる分野を重点的に強化するとともに新しい価値の創造に挑戦する。また、自由と多彩性を尊重するとともに 公正さを追求し、世界から信頼される存在を目指す。

ここに掲げた目標の実現のため、「東工大ビジョン2009」の内容は必ずしも網羅的なものとせず、重点を絞り込んでいる。具体的には、将来構想の実現を通して、広く国民から篤く信頼され、在籍する学生・教職員が誇りと喜びを持ち続ける大学、理工系の知を基盤としながら、総合的な人間形成を行う理工系総合大学として、本学が発展を続けていけるよう、次の事項についてとりまとめた。

  • 教育
  • 研究
  • 社会貢献
  • 国際連携
  • 組織の見直し
  • 経営基盤の強化
  • キャンパスの総合的な利用の推進

全体的な事柄について述べる「中期目標」みたいなのではなく、東工大が将来なるべき目標に向けた事柄をまとめたモノだそうです。

そんな重点の中でも、気になった箇所をピックアップしてみました。

  • Ⅱ. 教育
    • 1.教育の質の保証と向上
      • (3)入学初年度の全寮制化も見据え、学生寮を教育施設と位置づけて充実させるとともに、文科系教育も強化するなど、総合的な人間形成を推進し、高い志と倫理性、本質を悟って周りの人々と心を一つにして事に当たる精神を備えた人材を育成する。

「初年度の全寮制化」って、それなんて東京理科大学?(東理大の基礎工学部は1年時に長万部にて寮生活)東工大はまとまった学生寮が少ないから、もちっと整備をしてほしいところ。

  • Ⅱ. 教育
      • 1.教育の質の保証と向上
        • (6) 附属科学技術高等学校を科学技術に特化した多様性のある人材を輩出する実験校として位置づけ、高大連携を推進する。

高大連携はこれからも続けていく方針らしい。「多様性のある人材」だから、一般入試で入る人とは異なった性格が欲しいんでしょうか。

  • Ⅱ. 教育
    • 2.教育組織の見直し
      • (4) 人文系・社会科学系・芸術系の組織を強化する。そのため、関係研究科の改組も視野に入れる。
  • Ⅲ. 研究
    • 1.新しい学問領域の創出
      • (1) 従来の枠組みを超えた、文理融合を含む新しい学問領域・学問体系を創出する。

世界文明センター(人文学院・芸術学院)大学院 社会理工学研究科のことを指していると思われます。世界文明センターは講演会、社会理工学研究科はArt at Tokyo Techという名で催し物を開いているけれど、双方のイベントとも演目が似通っているから、統一したタイトルで行うと、宣伝効果もあるんじゃないかと。どちらも面白い企画だから、続けていってほしい気持ちはありますが。

「関係研究科の改組」に絡めて言うと、社会理工学研究科の直属の組織として「社会理工学部」を作っても良いんじゃないかと思う。社会工学科が建築・土木系と同じ6類なのはまだ許せるとして、経営システム工学科が化学系の3類と機械系の4類なのは、全く納得がいかない。

  • Ⅴ. 国際連携
    • 2.学生の国際性の向上と質の高い留学生育成
      • (1) 修士課程修了までに少なくとも一度は海外経験するなどの仕組みを作る。

国際的な学生を作るには、手っ取り早く海外に行くのが良いようです。しかし、修士課程に組み込むとは言うことが大胆だなあ。

  • Ⅶ. 経営基盤の強化
    • 4.財務力の強化
      • (1) 土地・建物等資産の有効活用とメンテナンスを確実にするシステムを構築するとともに、新規施設への需要に応えて、田町キャンパス等の土地資産の活用を検討する。
  • Ⅷ. キャンパスの総合的な利用の推進
    • 1.総合的なキャンパス計画に基づく合理的・効果的な利用の推進
      • (1) キャンパス間の役割分担の見直しや各地区の再開発の検討を含め、大岡山、すずかけ台、田町のそれぞれのキャンパスの合理的・効果的な活用に向けてキャンパス計画を更新していく。

これはあれか、都心の一等地の土地である田町キャンパスを、附属高校以外の用途で使おうということかな?附属高校を田町から大岡山キャンパス内(出来るとしたらワグネル記念碑やひょうたん池のあたりか?)に移転させるという構想があるのも聞いたことがあるなあ。

思えばCIC東京も、山手線の駅から徒歩1分という好立地だからこそ、各大学のオフィスとして使われることを目的として作られたんだよね。「田町キャンパスにでっかい高層ビルを建てて家賃収入で儲ける」というのは妄言でもないのかな。

  • Ⅷ. キャンパスの総合的な利用の推進
    • 1.総合的なキャンパス計画に基づく合理的・効果的な利用の推進
      • (2) キャンパス計画の検討・実施に当たっては、学部の大岡山への集中化、大学院研究科や研究所等の組織改革の検討を踏まえる。

「学部の大岡山への集中化」ってことは、もしかして7類(生命理工学部)もすずかけ台から戻したりするのかな?実験設備の状況からあまり考えられないけど、キャンパスを分散させる方針でないというのは初耳。まあ、どの大学も都心回帰の傾向があるから、東工大もこの流れに乗るのは自然か。

  • Ⅷ. キャンパスの総合的な利用の推進
    • 3.大学関連施設の整備
      • 学生寮の新設、学生会館の新設、外国人宿舎充実等の施設整備を検討し、可能なものから推進する。

なごみの広場(水銀広場)に学生会館を造るというやつですね。現在のサークル棟は5つぐらいに分かれていて繋がりがもちにくいし、棟によっては老朽化が激しいから、まとまった建物を整備してほしいところ。

「東工大ビジョン」の全文は以下から読むことが出来ます。

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