新海誠監督作品を連続で視聴したので感想を記しておく

1月3日に「君の名は。」が地上波初放映されるのに合わせて、テレビ朝日系列でこれまでの新海誠の監督作品4つが放映されました。

視聴した感想を忘れない内にここに残しておこうと思います。ネタバレしている箇所があると思いますので、まだ見てなくてこれから見ようとしている人は注意してください。

ちなみに私は「君の名は。」は2016年に劇場で鑑賞しています。他の作品についてはこれが初めての視聴でした。

秒速5センチメートル

『「秒速5センチメートル」を既に視聴した人は、「君の名は。」のラストで出逢うまでハラハラした』という前評判は知っていたので、この作品が胸を突くような悲しいストーリーだと身構えて視聴に望んだのですが、見事に悲恋でした。生涯で見た映画作品の中で、最も視聴後も心に残る感情が大きい作品でした。

第1話『桜花抄』で明里に逢うために北関東に向かう貴樹が、降雪のため列車が遅延しなかなか辿り着けない様子を見て「ああ、お互いケータイも持ってないからこのまま逢えないんじゃないだろうか」とハラハラし、岩舟駅で出会えた瞬間に体中に入っていた力がどっと抜けました。遠くまで自力で向かった甲斐があった、良かった、って。

第2話『コスモナウト』は種子島に住む女子校生の花苗の淡い恋心を描いた話、でもあり、日本の南の離島から打ち上げられるロケットの様子を綺麗な画面で描いた話でもあるのかな、と。帰路に就く2人を妨げるのが、輸送中のロケットという光景、日本の他じゃなかなか見られないでしょう。離島の小さな学校と、遠く宇宙に打ち上げられるロケットの対比が素晴らしいです。

第3話『秒速5センチメートル』は、えーとあれだ、山崎まさよしのミュージックビデオだ。別に揶揄するつもりはなくて、ストーリーの流れから音楽が流れ始め、カットの移り変わりに関してまで非常に素晴らしいと思えるのです。最終的に貴樹が明里に逢えない、ということよりも、貴樹が仕事で体を壊してしまうというくだりが非常に心に響きます――というのは、私が社会人だからでしょうか。

この悲恋について、バッドエンドかどうか、というと私は全肯定しかねます。第1話で2人がちゃんと逢えた時点でそれなりに幸せであるはずで、貴樹にとっての幸せがそこで頂点であったので相対的にはちょっと悪いけど、「初恋が必ず実るはずないでしょ」という、よく有るのだけれど悲しい話、というだけで。いや個人的には初恋の人とくっつくのも良いストーリーであるとは思いますが…あれ、やっぱバッドエンドか?

ちなみに。第1話で「降雪のため列車が遅延」という展開がありますが、宇都宮線や両毛線はそう簡単に雪で列車が遅れたりしません、念の為。


星を追う子ども

2011年にこんな作品が夜に出てたんですね、全然知らなかったです。

ジブリ作品を連想させる部分が確かにあると思うのですが、それはある程度自覚的にやっていると監督自ら語っているように、「田舎の少女がふとしたキッカケで異世界へ旅立つ」というストーリー、異世界の遺跡が並ぶ風景やその土地での文化、よく分からない生き物が出てくるなど、たしかにジブリっぽい雰囲気が随所にあります。

同時に、私には『新世界エヴァンゲリオン』っぽさも感じられました。太古の水「ヴィータクア」は、肺に満たすと呼吸が出来る、というのはエントリープラグを満たすLCLに似ています。また森崎竜司が発した「南極での例〜」という台詞も、セカンドインパクトで南極大陸が消滅したことを想起させます。もしかしたらどちらもエヴァ以前での使用例があるのかもしれませんが。


言の葉の庭

2013年の作品で、このタイトルはネットの広告などで見かけたことがあり、「へぇ〜新海誠って人が新作作ったんだ〜」と思った覚えがあります。その時は結局劇場で見なかったんですけれども。

雨は3人目のキャラクターと言われるほど雨が印象的に出てきます。ドラマでもアニメでも、雨天というのは雰囲気が落ち込むシーンが多く、晴天が主要なシーンとなることが多いのですが、「言の葉の庭」は雨模様であっても良い雰囲気、というかアンニュイな空気が流れます。緻密な描写は新海誠作品全てに通じていますが、雨で濡れた地面に映る脚の運びまで描写してるのを見た時は「なぜそこまでベストを尽くすのか!」と驚きました。

他の作品は最終的に悲しく別れるのが多いようですが、本作ではタカオとユキノが自身の胸の内をさらけ出し、和解(というのかどうか…)するあたり、ちょっとテイストが異なっているように思えます。ユキノがタカオの元を離れる結末は変えられなかったようですが、心までは離れていないようでした。


雲のむこう、約束の場所

今回の特集の中で最も古い2004年の作品、ということもあるのですが、絵柄などだけでなく、雰囲気がちょっと昔の作品、という風に受け取りました。

日本が分断され北海道は別の勢力に占領されており、北海道の真ん中にある謎の塔が本州から見える、とか。地球には意思があり、それがヒロインの心と繋がっている、とか。少年時代に作っていた飛行機を使ってヒロインを塔の傍まで向かわせると目が醒める、とか。なんだかとってもゼロ年代!みたいな印象を受けるのです。私はゼロ年代がどういうものかよく知りませんけれど。

主演の声を充てたのが吉岡秀隆ということもあり、儚げな世界観が作品を覆っているようでした。


君の名は。

そしてこれ、『シン・ゴジラ』を超えて2016年最も大ヒットした映画のこれ。

続けて視聴すると特にそう感じるのですが、これまでの新海誠作品に比べて非常に雰囲気が明るいです。なんというか元気。主演の瀧も三葉も明るい性格であることもそうですが、入れ替わりで日々の生活がドタバタしている様子をテンポよく描いているのでストレスなく見ることが出来ます。

「中身は立花瀧で身体は宮水三葉」を演じる上白石萌音、「中身は宮水三葉で身体は立花瀧」を演じる神木隆之介、どちらも非常に上手く演じ分けているのが凄いと思います。

入れ替わりが一旦起きなくなって以降、糸守にたどり着く瀧とほか2人、廃墟の糸守で出てくる「立入禁止 復興庁」という看板を見た時に、改めてこの映画が「東日本大震災以降の作品である」ことを思い出させてくれました。避けられない大災害で、どうやって被害を防ぐか。入れ替わりを利用してこのミッションに挑む2人を、応援せずにはいられませんでした。

時が流れ、東京で瀧と三葉は再び出逢う――のですが、「あそこで再会しなくても良かったんじゃないか」という感想をしている人が、私の周りにいました。しかも複数。なるほど、新海誠のテイストだと、秒速5センチメートルよろしく『あれだけ心を通わせていた二人なのに、結局別々の道を歩む』という雰囲気が、作品の随所から見え隠れするのかもしれません。


気になっていた新海誠作品、ほしのこえ以外を通してこの機会に視ることができました。全作品を通して綺麗な拝啓と透き通った描写、作品ごとに異なる空気感を感じることが出来て良かったです。