私が第2回演奏会(2010-04-18)から参加している市民吹奏楽団、Hynemos Wind Orchestra (ヒネモス・ウインド・オーケストラ)、2008年の創団から5年、団員数は30人ちょっと、歴史も浅く団員数も多いとはいえませんが、これまで着実に(団体としても、演奏技術としても)成長している楽団といえると思います。
この楽団は、他のアマチュア吹奏楽団とは異なる点がイロイロあります。その点も踏まえて、ヒネモスという吹奏楽団を紹介したいと思います。
前史 〜 玉吹奏楽団
Hynemos Wind Orchestra (ヒネモス)は2008年に創立、翌2009年から演奏会活動を行っていますが、その前に母体となる団体が存在しました。玉吹奏楽団です、多摩吹奏楽団じゃないよ。
その時の公演の記録はヒネモス公式に掲載されていませんが、演奏を聴きに行ったSaltさんの日記に当時の様子が記されています。
-Diary-
2006/10/01(Sun)
(前略)
午後から演奏会。
- 玉吹奏楽団/岡田渉@所沢ミューズ 13:30play
- 間宮芳夫:ベリーを摘んだらダンスにしよう
- 伊藤康英:吹奏楽のための叙情的「祭」
- 間島俊夫:コーラル・ブルー沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象
- A.リード:アルメニアンダンス partII
- J.メイ:交響曲第1番「指輪物語」
ミューズてこんなに駅から遠かったっけ? 結構余裕もって電車選んだつもりだったのに、1曲目間に合わず。次行くときはもっと余裕もってかないとな…。ここのホールに聴きに来るのは2,3回目だったと思いますが、アクセス面に目を潰ればなかなか良いホールと思う。よく響くよね。ここで吹いたらかなり気持ち良さそうだ。ただ、最初端の方に座ったら音量バランスがひどかったな…。あの場所ならここまでひどいってことはなさそうなんだけど。「演奏者のせい?」と疑ったが、後半で中央にうつったら大丈夫だったし。ホールのせいも多少なりともありあそう。
さて、演奏。久し振りに吹奏楽聴くとやっぱり吹きたくなる。しかも祭とアルメニアン聴いちゃったら、そりゃ吹きたくなるよ。吹奏楽って大学2年の夏にやった“吹奏楽もどき”を入れても3年もやってない。リードとかスパークとかやりたいなぁ。
疲れがまだ取れてなかったらしく、アルメニアンですら寝そうになってしまった。その状態で指輪物語がもつはずもなく。3楽章後半から撃沈。ゴメン、後輩たち…。でもソロはちゃんと聴いたから!
第1回定演ならば、今後に期待ですね。偉そうなこと言うと、Tpの体力と技術、Clの人数、Saxの度胸、がもう少しあるといいかも。Clはそんなに音量足らないと思ったわけでもないんだけども、ぱっと見少なそうに見えて。
小中学時代の友達が乗っててびっくりしました。終演後に少し話したり。
自分が吹奏楽曲をそんなに知らないのでよくわかりませんが、初回公演から指輪物語ってのは結構冒険していると思います。そして、「吹奏楽オリジナル曲を取り上げる」というヒネモスのコンセプトはこの頃から変わっていないようですね。
なお、「玉吹奏楽団」としての第2回公演は(多分)開催されず、2008年にHynemos Wind Orchestraとして再結成され今に至ります。
ヒネモス 基本情報
楽団名にある「ヒネモス」とは即ち「終日」、一日中音楽と触れ合っていこう、という意味を込められて付けられたようです。
「ひねもす」とは「終日」、一日中音楽に浸っていよう、的な意味、でしたっけ・・・?
— ヒネモス・ウインド・オーケストラ (@hynemoswind) August 6, 2013
@hynemoswind 認識正しいです。
— k_tori (@k__tori) August 6, 2013
スペルが「hinemosu」「hinemos」などではなく「hynemos」なのは、英語っぽいスペルで日本語らしさを取り除こう、とかいう理由だった気がします。
どこかの高校・大学吹奏楽団のOB団体というわけでもないので、団員が以前所属していた団体も様々です。帝京八王子や早大学院、文杉やJGに東大東工大など、音楽監督である岡田先生のツテで引き集められた人が多いです。知り合いの知り合いを連れて来たり、コネではなくWebサイトを見て連絡してくださった方もいるので、この団体以外の出身者もいます。そして吹奏楽よりオーケストラ出身者が多いのも特徴です。
ヒネモスの1年は、およそ以下の様な行事が行われます:
広報活動を行って、一般のお客様に聞いてもらう演奏会。「団員は必ず1曲以上出演すること」という原則はありますが、あとは基本的に団全体が動くことはありません。演奏会の前に1度音楽監督にレッスンをみてもらう以外は、団員が勝手にアンサンブルを編成して勝手に練習日程を調整して勝手に練習会場を確保します。
地方自治体が主催する音楽祭などに出演します。例年、小平市青少年音楽祭や練馬まつりのステージ企画として参加しています。来年は三鷹市市民文化祭「吹奏楽のつどい」に参加しようか、という話もありますので、この他の企画にも今後出演する可能性はあります。
団員だけの、内輪で行う演奏会。「団員は必ず1曲以上出演すること」という原則は基本的に同じ。団内演奏会らしく、内輪ネタで盛り上がったりすることも。
楽団としての集大成で、1年間に行った各練習やアンサンブル企画はこのために行ったと言っても過言ではない。演奏会の選曲は現在音楽監督が行っていて、第4回定期はアメリカ、第5回定期はイギリスと、明確かつ統一感のあるプログラムになっている。ちなみに来年4月の第6回定期は、メンデルスゾーンにヒンデミット、ブラームスというドイツプログラムである。
2012年はこれらの他に小学校の音楽教室への出張演奏という行事もありました。この時に担当だった先生が転勤した関係で今年は呼ばれたりしなかったのですが、今後もこういった話があれば請けるかもしれません。
変わった練習手法
上記の1年の流れを見ると、吹奏楽団といいつつ吹奏楽曲を演奏する演奏会は、10月頃の地域音楽祭と4月の定期演奏会のみだと分かります。定期演奏会で演奏する曲目は11月頃から練習を開始しますが、秋の地域音楽祭で演奏する曲目を本格的に練習し始めるのは8月後半から9月頃です。
コンクールに出場する吹奏楽団なら、4月から8月までみっちり課題曲と自由曲の練習を行う、となるのでしょうが、後述する通りヒネモスは吹奏楽コンクールに出場しません。
ではヒネモスは4月から8月まで何もしないのか?そんなことはありません、月に2回程度、全体合奏練習は行います。では何の曲を練習するのか?
ヒネモスはこの期間、レパートリー練習という練習を行います。過去の吹奏楽コンクールで課題曲として指定された曲目を、吹奏楽曲の勉強や初見力の向上などを目的として練習するのです。2013年度のレパートリー練習では、1979年度の課題曲であった藤田玄播「幻想曲 幼い日の想い出」や奥村一「行進曲 青春は限りなく」、同時期に自由曲としてよく取り上げられていたフランク・エリクソン「序曲 祝典」などを練習しました。
団員からのリクエストがレパートリー練の曲目に加えられることもあり、2000年度課題曲の坂田雅弘「吹奏楽の為の序曲」、映画音楽である黛敏郎「天地創造」が今年はリクエスト曲としてレパートリー練習で演奏されました。
基本的に演奏会に披露することを前提とはしていませんが、これらの曲目の中から地域音楽祭で演奏する曲目を選ぶことがあります。今年の小平市青少年音楽祭で演奏する、藤田玄播「幻想曲 幼い日の想い出」とショスタコーヴィチ「祝典序曲」は、そういう経緯で選ばれました。
毎回の練習でも、他の楽団とは(おそらく)違うところがあります。チューニングをB♭ではなくAで行うところも勿論ですが、曲の練習に入る前に、コラールの合奏、そして合唱があります。これはブレスの箇所などを含む息遣いの方法、そして楽器に吹きこむ息の使い方、ピッチの取り方などを練習するためです。まず楽譜通りに合奏、次に楽器を置いて歌い、そして再度合奏する、というパターンです。最初の合奏と後の合奏で、明らかに音の響き方が変わっているので、この練習は確かに効果があるのだと思います。
ちなみに、音楽監督が言うには「ゆくゆくは吹奏楽定期、アンサンブル演奏会に並んで、合唱定期も行いたい」そうです。まあそれが実現するかどうかわかりませんが、やってやれないこともない気がします。
ヒネモスが行わないこと
団の活動として、「吹奏楽オリジナル曲を取り上げる」というヒネモスですが、この言葉だけだと中々ヒネモスの特徴を表現しきれていないような気がします。
そこで、ヒネモス公式サイトの団の紹介として、ヒネモスが行わないことを3点取り上げています。
- Hynemos Wind Orchestraは、オーケストラの模倣を目指しません。
交響曲や組曲などの管弦楽曲を、本来の弦楽器パートに管楽器をあてがい演奏する。管弦楽曲のうち、管楽器が目立つ箇所を抜粋して編曲したものを演奏する。――こういった活動はとても興味深くもありますが、本来のオーケストラをそのまま吹奏楽で再現するような活動を、Hynemos Wind Orchestraでは行いません。
- Hynemos Wind Orchestraは、コンクールの入賞を目指しません。
課題曲と自由曲を、十数分の制限時間内に、一糸乱れぬ演奏を行う。予選を勝ち抜き、全国大会出場を目指す。――こういった栄冠に向かってメンバーが頑張る姿は羨ましくもあります。しかし、吹奏楽曲を演奏会で取り上げることを目的としていることから、Hynemos Wind Orchestraではコンクールにこれまで出場したことはありませんし、今後も参加する予定はありません。
- Hynemos Wind Orchestraは、ポップ・ミュージックの演奏を目指しません。
今テレビで話題の歌手の曲、懐かしいあのメロディー、吹奏楽に編曲したそれらポップス曲を演奏することで、吹奏楽に詳しくないお客様にも楽しんでいただけるかもしれません。ですが、吹奏楽を大人数での緻密なアンサンブルと考えているHynemos Wind Orchestraの趣旨にそぐわないと考えており、演奏会でこのような曲を取り上げることはまずないでしょう。
ちょっと補足。『オーケストラの模倣を目指さない』というのは、『オーケストラ曲を取り上げない』という意味ではありません。先に挙げたショスタコーヴィチ「祝典序曲」しかり、次回の定期演奏会で演奏予定のブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」しかり、オーケストラの名曲を取り上げることはあります。それらが名曲だから、という理由もありますし、「吹奏楽だからこそ表現できる響きがある」という理由もあります。
この項目で言いたいのは、「金管楽器がド派手で木管楽器が超絶技巧ばっかりな、迫力だけを考えたオーケストラ選曲は行わない」ということです。例えばショスタコーヴィチの交響曲第5番の第4楽章だけ抜き出して、定期演奏会の曲目として取り上げるようなことはしない、ということです。交響曲としての構成が崩れてしまいますし、オーケストラの曲を吹奏楽がオーケストラらしく模倣したところで、それはオーケストラの劣化版にしかならないのです。
『ポップスを取り上げない』というのも、音楽教室や音楽祭などの演奏では例外が含まれます。各演奏会でどのような曲を披露すべきか、という点は、その場の状況によって変化します。
ただし、例えば定期演奏会で「第1部:クラシックステージ、第2部:ポップスステージ」という構成にすることは、まず間違いなくしないでしょう。こういう選曲を行う背景には、観客のウケが良いポップス(往年の名曲とか、流行したJ-POPとか)を曲に入れることで、集客数の向上を狙っているのだと思います。しかし、このラインナップでは「吹奏楽オリジナルの曲を取り上げる」という理念が薄らいでしまいます。それに、ポップス以外の曲でホールを満たした余韻を破壊しかねないでしょう。あとはまあ、メンバーの中には若くない年齢の人もいるので、そういったキャピキャピした曲をするような歳ではない、という理由もあったりなかったり。
『コンクールに出場しない』というのは、例外なくこれまでヒネモスの原則でしたし、これからも絶対に出場しないでしょう。「制限時間内に演奏を終わらせる」「ピッチを全ての楽器でピッタリ合わせる」「パート全員が指を全く間違えない」といったコンクールで採点ポイントとなるであろう事項が、ヒネモスでは必ずしも最優先事項ではないのです。
「パート全体の正確性」よりは、演奏する一人ひとりが楽器で表現したい音楽を、舞台に乗っている全員で組み合わせていくことで、アンサンブルを成立させる、ということを主眼においているヒネモスでは、「コンクールで高得点を得られるような演奏」はどうしても目標になり得ないのです。
現在の団員構成
拙い文章ながらもヒネモスの現況について書いてみました。現在団員数は30人ちょっと、あまり多kはないですね。ただし、曲によってはオプション扱いで、メンバーがいないことも少なくないファゴットパート(現に、東工大附吹部にはオーボエを含めたダブルリード属がいませんでした)が、ヒネモスには何故か正団員として3人もいます。しかもそのうち一人はコントラファゴット所有しているし…まあ自分のことなんですが。
所有楽器と言えば、ユーフォニアムを含めた楽器の取引を行っていて、ユーフォニアム講座というウェブサイトの管理者さんも当団に入団しています。楽器取引を行っているため、バリトンやフレンチチューバなどもいくつか持っていて、練習にも複数台の楽器を抱えてやってきたりします。第5回演奏会ではパート人数2人に対して楽器が5つありました。
前半が終わって休憩時間です。 なお、先ほどのツイートに間違いがございました。バリトン&ユーフォニアムパート、楽器は全部で5台あります。 http://t.co/LbooMVpxlk
— ヒネモス・ウインド・オーケストラ (@hynemoswind) April 6, 2013
この他、響け!みんなの吹奏楽 スペシャルバンド2011に出演してた人とか、音楽大学を卒業した人も複数人入ったりと、面白いメンバーで構成されています。
…の割に、クラリネットの人数が足りないのです。現在の正団員は、ええと4人だっけ?前はもっと居た時もあるのですが、就職や進学、転勤などでなかなか定着しておりません。
なので、この記事を見てくださった、吹奏楽楽器経験者の貴方!是非ともヒネモスの練習に一度足を運んでみてみませんか?練習に来づらいというのであれば、10月14日のルネこだいらもしくは10月20日の練馬運動場で演奏を聴いてみてください!