2019年11月17日は、私が運営に加わっている東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団の演奏会がありました。
facebookには演奏会直後の気持ちを書いたので、1ヶ月ほど経った今、より俯瞰してこの演奏会を振り返ってみたいと思います。
第16回演奏会の振り返り記事でも書いていますが、2018年の第16回演奏会はコンセプトが定まらず、演奏会づくりが相当に迷走していました。
その反省を踏まえて、今回は相当に選曲案を練りました。…選曲案は団員全体からの発案、それを団員全員で投票するので、事務局が操作する要素はないのです。なので、団員全員に支持されるであろう選曲を考えました。
facebookの記事にも書いたように、元々は2017年の選曲案として提出された「Last Job」というタイトルでした。ちなみにその選曲案を破って第15回演奏会に選曲されたのは、モルダウ、トゥオネラの白鳥、ライン(シューマン交響曲第3番)、アンコールが美しき青きドナウの《大いなる川とともに》@川口でした。それを提出していたのも私だったりします。
「作曲家それぞれの最後の作品」というコンセプトは非常に判りやすいものの、Last Jobという文字列に押しが弱いと考えました。そこで、「最高」「最後」という、漢字で分かりやすく内容を伝えられる文字を入れることにしました。何を以って「最高」と呼べるか、というところに議論の余地はあったかもしれませんが、作曲の経緯を考えれば最高の作品と扱っても問題ないだろう、としました。
ラフマニノフ交響的舞曲を選んだのにはもう一つ理由があります。2018年9月のアーベントフィルの演奏会が中止となってしまい、その時のメインの曲が交響的舞曲だったのです。リベンジ演奏会も
企画されて履いたものの、やはり中止となってしまいました。しかし折角練習を続けてきて、曲の良さを把握できていたところ。どうあっても演奏したい、パートが変わってでも!ということで、それならば自分が所属する団体で演奏会を企画すれば良い、とこの曲を候補に入れることにしました。
悲愴を選んだことにも別の想いがありました。私が所属する別の楽団、毘沙門天管弦楽団が2020年2月9日に開催する第57回演奏会のメイン曲にも、チャイコフスキー交響曲第6番《悲愴》を演奏することが1年以上前から決定していました。そちらで1stを私が演奏する案が浮上していたのですが、悲愴といえばファゴット1st奏者にとって特別な曲、おそらくもう一人の奏者も1stを演奏したいはず。ならば、と悲愴を演奏する機会を増やして、私が運営をしている、いわばホームの楽団で1stを演奏することにしよう、と考えました。
そのような2つの別々の構想と、コンセプトとして筋の通った選曲案が奇跡的に一致し、《最後にして最高の曲》という選曲案として結実しました。2度の選曲投票を経て、2年ぶり3度目となる、私の選曲案がTHPOの演奏楽曲となりました。
選曲案が定まれば次に考えねばならないのがチラシなどに使うデザイン案。画家の最後の作品などがないかなども検討しましたが、最終的にはガウディの最後の作品(というかまだ完成していない)、サグラダ・ファミリアをモチーフとして使うことにしました。ただし、一見してその建物とは分からないよう、内部から天井を見上げる写真を使用しました。アンティーク調に色調を変えて、「最高」という雰囲気をアップさせました。
こうして演奏会の骨格が出来上がりました。
東京ハートフェルトフィルハーモニック管弦楽団 第17回演奏会《最後にして最高の曲》
- 日時
- 2019年11月17日(日) 開場13:30 開演14:00
- 会場
- 大田区民ホール・アプリコ 大ホール
- 指揮と進行
- 小久保大輔
- 共同進行
- 小久保陽平
- 曲目
- モーリス・ラヴェル / 古風なメヌエット M. 7
Joseph-Maurice Ravel / Menuet Antique M. 7
- セルゲイ・ラフマニノフ / 交響的舞曲 作品45
Серге́й Васи́льевич Рахма́нинов(Sergei Vasil’evich Rachmaninov) / Symphonic Dances, Op. 45
- ピョートル・チャイコフスキー / 交響曲第6番ロ短調 作品74 《悲愴》
Пётр Ильич Чайковский(Pyotr Ilyich Tchaikovsky) / Symphonie no 6 en si mineur, Op. 74« патетическая (Pathétique) »
- アンコール : ピョートル・チャイコフスキー / 交響曲第6番ロ短調 作品74 《悲愴》 第3楽章より抜粋
- 入場料
- 無料
前回演奏会も指揮を振ってくださった小久保大輔先生と、弟さんでいらっしゃる小久保陽平先生にもご助力いただける、しかもわりとコントっぽいことも担当していただけそうだ、ということで、お二人による曲解説も含めたお芝居をしていただく、というのは早くから構想に出てきました。ピョートル・チャイコフスキーの弟、モデスト・チャイコフスキーが「自分が悲愴という副題を考えたことにしてほしい」という、史実を織り交ぜたやり取りも思い浮かびました。時間の都合上、そこはカットになってしまいましたが…。
カットになったといえば、前回、前々回でロビー企画として行っていた団員撮影の写真による写真展は今回は行なえませんでした。用意する時間が取れなかったという理由もありますが、そもそも今回のコンセプトにどのような写真を添えれば演奏会の盛り上げとなるか、ひらめきが出てこなかったためです。
パンフレットは前回が単なる曲紹介だけで終わってしまったので、各作曲家+ガウディの年表を用意しました。シンプルな曲紹介文だけでは分かりづらい、作曲家の曲に対する位置付け、特に「最後」というだけあって生涯のどのあたりで作ったのか、を分かりやすく伝えられたのかと思います。
前回演奏会が、演奏的にも、企画的にも不本意に終わってしまった反動から、今回の演奏会はかなり力を入れて、後悔のないような演奏会となるように企画しました。私としては及第点を挙げられるようではないかと思える一方、事務局と演奏者との両立がそろそろ難しい領域まできているような気がしてきました。少なくともメイン曲でソロを担えるほどの精神力は保てないかな… そういったバランスも検討し直すのが今後の課題かもしれません。