東工大で爆発事故が起きた本当の理由

もう1ヶ月ほど前のことになりますが、すずかけ台キャンパスのJ2(総合研究棟)で爆発事故がありました。J2と言えば去年は不穏な動作を見せるシンドラーエレベータで有名になりました(それについての記事)。いやー話題の耐えない建物だこと。

東工大で爆発 実験中の学生2人やけど

17日午後3時20分ごろ、横浜市緑区長津田の東京工業大すずかけ台キャンパスの実験室で爆発があり、同大の男子大学院生(24)と男子大学生(22)が顔や手などにやけどを負った。実験器具が焼けたが、建物に被害はなかった。

神奈川県警緑署などによると、実験室でシリコーンの液体に検体を入れて加熱していたところ、発火したという。

事故当時、実験室には5人いたが、残る3人にけがはなかった。担当教官は実験に付き添っていなかったという。

産經新聞の記事(iza!経由)を見ると、発火したと書かれているだけで、爆発までにいたる経緯が書かれていません。神奈川新聞のカナロコに詳しく事件の概要が書かれていました。

実験中に爆発事故で学生2人がやけど/横浜・東工大キャンパス

十七日午後三時二十分ごろ、横浜市緑区長津田町の東京工業大学すずかけ台キャンパスの実験室で爆発事故が起き、男子学生二人が顔や胸などにやけどを負った。病院に運ばれたが命に別条はないという。緑署で原因を調べている。

調べでは、やけどしたのは同大大学院生命理工学研究科大学院生(24)と生命理工学部四年生(22)。

爆発があったのはJ2総合研究棟の八階にある生物有機化学実験室。大学の説明によると、二人はDNAの研究中で、検体をビーカーに入れて保温する準備のため、鉄製器具にシリコンオイルを入れ加熱していた。発火したため液体窒素を注入したところ、突然爆発したという。

同署は、オイルの温度を一定に保つためのセンサーの役割を果たす線が何らかの要因で外れたとみて調べている。

当時室内には学生四人がいたが、他の二人にけがはなかった。指導の助教は別室にいたという。

現場は東急田園都市線すずかけ台駅の東側で、キャンパス内には研究施設などが多くある。

同キャンパスでは二〇〇二年八月にも実験中に火災が発生し、大学院生一人が軽傷を負う事故が発生している。

強調の部分は自分で付けたのですが、ここが事件の重要ポイントです。薬品をシリコン油で湯煎すると、シリコン油に火が燃え移ってしまうのは良くある事だそうです。問題は、消化するのになぜ液体窒素を注入したか、ということです。

初期なら座布団や濡れたタオルで酸素を遮断すれば消化できるはず。しかし液体窒素を注入したら—窒素の沸点は-195.8°Cです—瞬く間に気化します。テンプラ油の火災に水を注ぎ込むのと同じ原理ですね。そりゃ爆発も起こりますよ。

この爆発事故ですが、東京工業大学側はこの事件の詳細を広めてほしくないそうです。ちゃんと消火すればボヤで済んだものを、液体窒素を注ぐという致命的ミスによって爆発事故にまで発展してしまったわけだから、その気持ちも分からなくはないです。

それにしてもなぜ水ではなく、液体窒素を注いだんだろう・・・、液体で冷却すれば火も消えると思ったのでしょうか。液体窒素は万能と思われてるかもしれませんね。過去には室内の気温を下げようとして室内に液体窒素を撒いて、窒素が充満した室内にいた助手・学生の2人が死亡する事件も起きています。

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